公開日 : 2025年09月01日

第1回 代沢せせらぎ公園 試行体験日〜およそ300名が体験した、新しい公園のかたち〜

プロジェクトの背景:住民参加型公園づくりの新たなステージ

世田谷区は、代沢せせらぎ公園に隣接する北側の土地(2,350㎡)を新たに取得し、令和10年春の開園を目指した公園拡張整備事業を進めています。この取り組みは単なる公園の拡張ではなく、地域住民との「参加と協働」による公園づくりとして位置づけられています。(参考 :世田谷区公式ホームページ)

代沢せせらぎ公園は、1991年より「住民参加型公園設計」を経て整備され、今回のリニューアルでも同様のアプローチが採用されています。公園づくり検討会での対話と、現地での試行体験日を組み合わせることで、地域住民の「やってみたい」を実際に検証し、公園のデザインと運営ルールに反映させる革新的な手法が導入されました。

プロジェクト実施体制

エンドクライアント: 世田谷区
クライアント: 株式会社ランドスケープデザイン
試行体験日 企画・設計・運営: dot button company株式会社

本試行体験日は、世田谷区の公園整備事業の一環として、株式会社ランドスケープデザインとの協働のもと、体験開発の専門企業である当社が企画・設計・運営を担当いたしました。

この第1回試行体験日は、そうした住民参加型公園づくりの実証実験として開催され、想定来場者数100名を大幅に上回る約300名の参加を得て、地域の新たなコミュニティの可能性を実証する成功を収めました。

プロジェクト概要

開催日: 2025年6月1日(日)11:00〜16:00
※当初5月31日(土)開催予定でしたが、雨天のため順延

場所: 代沢せせらぎ公園(既存区域・拡張区域)
来場者数: 約300名
テーマ: 「みどり・農・森づくり」「賑わい・交流・地域活動」「健康・スポーツ」

3つのテーマを軸とした体験価値創造により、公園の新たな可能性を地域住民とともに実証。3世代にわたる幅広い年齢層の住民が自然に交流し、地域の生態系調査から子どもの自由な遊びまで、多様な体験が一つの空間で同時に展開されました。

【テーマ1】みどり・農・森づくり 〜科学的探究心と自然着の育成〜

土や緑に直接触れる体験を通じて、生物調査と市民参加を融合させました。

実施した体験内容

  • 土壌調査・生物調査の実施 – 参加者が実際に公園の生態系を調査

  • プランターを使った植生実験 – 子どもたちが種まきから成長観察まで体験

  • 虫取り・自然観察 – 多様な生物との出会いを通じた学び

生まれた体験価値

「虫取り人気が高く、参加者の関心を集めた」「虫の種類の多様性が確認できた」という声が示すように、都市部の公園でこれほど豊かな生物多様性を体験できることに、多くの参加者が驚きと感動を覚えました。

特に印象的だったのは、実際に土に触れ、虫を観察する子どもたちの真剣な眼差し。科学的探究心の育成と、地域環境への愛着形成が同時に行われる瞬間でした。

参加者の声:

  • 「虫の観察を通じた多様性の体験ができた」

  • 「世代を超えた学びの共有が自然に生まれた」

【テーマ2】賑わい・交流・地域活動 〜日常の延長としてのコミュニティ形成〜

公園での「のんびり時間」が、どれほど地域住民にとって貴重な体験となるかを実証したのが、このテーマでした。

核となった「のんびりグッズレンタル」

レジャーシート、リクライニングチェアなどの貸し出しサービスが想像以上の反響を呼びました。「近所のパン屋でパンを買い、食べる場所を探していたので、外でゆっくり食べられて気持ちが良かった」という参加者の言葉が、この取り組みの価値を表しています。

自然発生的な交流の創出

特に印象深かったのは、しだれ桜の下に生まれた自然なコミュニティ空間です。「数人が椅子やシートを広げてゆっくりしていると、自然と他の方も公園に滞留する効果が見られた」という観察結果が示すように、一人ひとりがリラックスすることで、全体の空間に温かな雰囲気が生まれました。

散歩で通りがかった近所の方も足を止め、街の昔の様子や思い出を話してくださる場面も。世代を超えた記憶の共有が、自然な形で実現されていました。

時間帯による利用パターンの発見

  • 朝: 犬の散歩やランニングをする方

  • 昼: ランチを楽しむ方がパラパラと来訪

  • 午後: 子どもや家族連れで賑わい

  • 夕方: カップルの利用も増加

参加者の声:

  • 「のんびり過ごせること自体が大人にとって大きな魅力」

  • 「緑豊かで広々とした空間が好評」

  • 「小さな子連れの家族は、子供はレジャーシートに座り、お父さんはリクライニングチェアに座るパターンが多かった」

【テーマ3】健康・スポーツ 〜世代を超えた遊びの創発〜

身体を動かす爽快感と、笑顔と歓声が生まれる瞬間を大切にしたテーマでした。

実施内容

  • ストラックアウト – 的当てゲームで達成感を体験

  • 水風船や竹を使った遊び – 特に水遊びは子どもたちに大好評

  • 自由なボール遊び – キャッチボールなどの需要が高かった

時間帯別の利用特性

「午前中は未就学児、午後は小学生以上の時間帯別利用があった」という観察結果から、年齢に応じた遊びの自然な棲み分けが確認できました。

参加者の声:

  • 「遊びがあれば楽しんでもらえる」

  • 「水遊びは好評」

  • 「キャッチボールなどのボール遊びの需要があった」

そのほかの企画:コーヒーで繋がる地域の輪

地域のコーヒー店「世田谷 三宿 自家焙煎珈琲豆」の出店により、香り豊かなコーヒーを囲んだ温かな交流が生まれました。コーヒーの香りが公園全体に広がり、より豊かな体験空間を演出。

コーヒーを片手に、初対面の住民同士が自然に会話を始める光景は、地域コミュニティ形成の理想的な姿でもありました。

体験価値創造の成功要因

1. 多様性への配慮

3つのテーマ設定により、幼児からシニア世代まで、それぞれが自分なりの楽しみ方を見つけられる設計になっていました。

2. 自然な交流の促進

過度に構造化せず、自由度の高い空間づくりを心がけたことで、参加者同士の有機的なつながりが生まれました。

3. 地域資源との連携

専門家との協働、地域店舗の参加により、外部リソースと地域の魅力が有機的に結合しました。

今後への展望と提言

代沢せせらぎ公園試行体験日(第1回)は、想定を大幅に上回る参加があり、地域住民にとって真に価値ある場を創造する機会となりました。

3つのテーマを通じて提供された多様な体験は、参加者の心に深く刻まれ、地域コミュニティの結束を強化する効果を発揮しました。 この試行体験日で実証された「公園の新たな可能性」を、世田谷区、株式会社ランドスケープデザインとの連携のもと、今後も地域の皆さまとともに発展させていく所存です。

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