公開日 : 2021年04月16日

【湯沢つくるカレッジ】アイデアをカタチにするために大切なこと

アイデアを生み出すためのヒントや秋田県湯沢市のさまざまな取り組みを知ることで、今までと違った視点で地域との関わり方を発見できる、湯沢市主催の学生イベントを開催。私たちは企画・運営を行いました。

数々のアイデアを形にしてきたゲストによる講義、湯沢市で活動を行っているゲストによるトーク、アイデアワークショップなど、当日のイベントレポートをお届けします。

▼イベント詳細はこちら
https://dotbuttoncompany.com/yuzawa-event/

 

<ゲスト情報>

ブルーエンパシー代表/大塚智子さん

福岡県出身。大学で地域経済を学んだのち、ソフトバンクグループで人事・検証エンジニアとして7年間勤務。その後、社会課題解決を目指すスタートアップを支援するMistletoe株式会社で創業支援事業に4年半携わる。個人の活動として、地域コミュニティ・教育・キャリア形成に関するプロジェクトに多数参画。現在は主に、大分県別府市をはじめとした自治体の創業支援、九州圏内の大学生への講義やワークショップ、またベンチャー企業の成長支援などを中心に活動している。これまで旅をしてきた国は58カ国ほど。

 

株式会社協同企画常務取締役・株式会社reblue代表/京野健幸さん

群馬県前橋市出身。株式会社reblue代表。株式会社協同企画常務取締役。結婚を機に10年前に湯沢市へ移住。県南のホテル運営に携わる傍ら、地域のお祭りや行事に積極的に関わり湯沢に埋もれる価値の再発掘に取り組む。2013年からは「JOZOまにあくす」と名付けた、日本酒の深みと旨みを提唱するイベントの代表として活動。2018年からは「発酵醸造」をテーマとしたイベント「fermentatorsweek」を開催。

 

地域おこし協力隊/旅のわツアー代表/齋藤あゆみさん

秋田県にかほ市出身。高校卒業後に県外に出た後、バックパッカーなど海外経験も含めて様々な価値観の異なる人と出会うことで、自らも成長することが楽しいと実感。そんな人と人が繋がり、新しい価値を生むことを旅という形で提供したいと思い、地元秋田で2020年2月に旅行事業者「旅のわツアー」を立ち上げる。現在、湯沢市の地域おこし協力隊としても活動中。

 

アイデアをカタチにできるオンライン学校「湯沢つくるカレッジ」

イベントは三部制。一部では、ざまざまな地域の事例紹介とアイデアを生み出すためのヒントについての講義、二部では湯沢市で活動を行っているゲストによるトーク、三部ではゲストと参加者のみなさんでアイデアワークショップを開催。ワークショップの後は交流会を行いました。

イベントには、北海道をはじめ秋田・東京・山梨など、各地から10名の学生が参加。大学の春休み期間中に地元へ帰省している湯沢市出身の方や、まちづくり・地方創生について興味を持っている方など、ゲストと参加者を交えたアイスブレイクは参加の動機や普段の活動が伺え、冒頭から盛り上がります。

 

アイスブレイクで場が温まったところで、ゲスト講義へと移っていきましょう。

「共感」を大事にする大塚さんは、地域の方々の伴走をしながら一緒にプロジェクトを進めることや「チャレンジしたい人を支える」ことを軸に活動しています。

大塚さんが今まで取り組んできた活動事例として、熊本地震発生後に発足した『BRIDGE KUMAMOTO(ブリッジクマモト)』、1月11日鏡開きの日に「人の背中を押す応援する日」を創造する『Ichi no Hito』、コロナ禍で心を繋げる大分県別府市の取り組み『&FLOW』、観光の基礎を築いた油屋熊八さんになぞらえた創業合宿『くまはち温泉』などがあります。

最近は、10ヶ国のバックグラウンドをもった学生がレポーターになって地元のチャレンジャーを取材し発信するウェブメディア「GENSEN」も推進しているとのこと。

 

大塚:地元の方に喜んでいただけることが大切。そのような想いで活動を行っていますが、そこにはどれだけ共に汗を流し、深く話してきたかが表れますね。

 

身近な人のことを考えてアイデアを生み出すことが大切

大塚:「アイデアは一つの新しい組み合わせであるという原理と、新しい組み合わせを作り出す才能は、事物の関連性を見つけ出す才能によって高められる」これを理解すると、アイデアは決して才能がある人だけが生み出せるものではないことが分かると思います。(ジェームス・W・ヤング著 「アイデアのつくり方」より。)

 

新型コロナウイルスの影響で競争から「共創」の時代になった今、どこか不自由に感じていたことや、一人では叶えられそうにないことにもチャレンジできる状況になったと話す大塚さん。

アイデアを生み出す際に大切にしていることは、半径5メートル以内の身近な人の助けになることや、実体験でされて嬉しかったこと・楽しかったことをベースに考えることだと言います。

そうすることで、困難にぶつかっても相手に確認しながら軌道修正でき、何よりも自分自身が幸せを感じられる。これまでの経験の中で、自分が挑戦してきたことや好きなこと、大事にしたいことをアイデアの源泉にすることで、夢中になれるアイデアが生まれると話してくれました。

「アイデアは結びつくことで生まれてくるため、キーワードとキーワードを結びつけて考えていきます」と具体例を元に説明をしていただきました。

 

コロナ禍におけるアイデアの事例

ここからはコロナ禍で生まれたアイデアについての事例紹介。

 

さきめし:応援したいお店の飲食を先払いし、自分や友達にプレゼントできる仕組み。

旅するおうち時間:地域の特産物(醤油、オリーブオイルなど)をご家庭にお届けして、生産者と会話ができる取り組み。

Enter the E :作り手の顔が見えるオンライン受注会。「服や生産者さんのこだわりを聞いた上で洋服を買いたい」という想いから生まれたサービス。

短編小説の自動販売機:ロンドンの事例。小説の一章節だけをレシート形式で読むことができるサービス。本を買う前に小説を書いている原作者の方の想いに触れてもらい、その後の購入に結びつける。

 

「みなさんが大好きなことやピンと来ていることに、地域の困り事や要素を組み合わせたり混ぜ合わせたりして、これだ!というアイデアが浮かべば、スタートは小さくていいのでどんどん実践してほしいと思います」と講義を締め括ってくれました。

事例やアイデアの生み出し方を聞いて、ノートにメモをしたり、真剣な眼差しで聞いたりと学生たちの熱量の高さが窺えました。

続いて第二部へ。湯沢市で活動するゲスト2人のトークへと移っていきます。

 

「自分たちで社会を変えられる」という気持ちを持って、新たな一歩を踏み出すことが大切

群馬県出身の京野さんが湯沢市に移住してきたのは今から10年前。奥さんの実家がホテル業を営んでいるため、ホテルの経営をしながら、地域のお祭りや地域にある資源を活用したウェディング、イベントなどの取り組みを湯沢市で行っています。

七夕絵どうろう祭りの実行委員長、発酵と醸造をテーマにしたイベント「Fermentors week」など、実行委員として幅広く地域の事業に関わっている京野さん。「Fermentors week」は発酵をテーマにしており、食だけに限らず「建物」「観光資源」「人」へと拡張し、「一人一人が個性を醸して、豊な社会をつくる地域」、「自ら発酵を続ける文化が息づく地域」を作りたいといった考え方のもと活動を行ってきたそうです。

京野:他にもロングテーブル晩餐会といって、湯沢市内にある車道のひとつを通行止めにして、長いテーブルで食事をする企画を行いました。ギネス記録が3kmなので、それを目指してまず第1回を開催すると、地元の方だけではなく、地域外からも足を運んで下さってみんなで食事して楽しみました。

 

「イベントを開催するだけでは地域は変わらないんです。多くの人が自分たちで社会を変えられるという考えを持ち、自ら一歩を踏み出すことが大切。新たな事業や産業を生み出すことが継続的な地域発展に繋がります」と話してくれた京野さん。

地域が抱える人口減少の課題は深刻で、自治体消滅マップでは東北、秋田はほぼ真っ赤に染まっていて、消滅が懸念されているとも言います。

京野:自治体消滅=地域消滅ではないとも考えていて、そこに住む人々が豊かに暮らしていれば、地域は消滅しないと考えています。他の地域に先駆けて、超高齢社会に向かっていくことをプラスに変えて、人生100年時代をよりよく生きることのできる地域を目指すことが大切なのではないかと思っています。

 

行政に依存するのではなく、地域に関わる一人一人の力でよりよい地域・暮らしを作り出していくことが重要。「まず自分たちの周りから取り組んでいきたいと思っています。近隣エリアの地域資源を活用しながら地域開発を始めている」と話す京野さん。

湯沢市でさまざまな活動をされてきた京野さんから見た視点を知って、参加者も自分の地元について改めて考える時間になったのではないでしょうか。

 

観光×〇〇の掛け合わせで企画を生み出す

湯沢市の地域おこし協力隊と、旅行事業者「旅のわツアー」を営んでいる斎藤さんは、秋田県にかほ市出身。日本各地や海外での生活を経て、2年前に秋田に戻ってきています。

高校卒業を機に県外へ出て、多くの人との出会いやバックパッカーの経験を通じて自分自身が成長し、人の役に立てることが嬉しいと思うようになったと話す斎藤さん。価値観の違う人との出会いや新しい価値が生まれる瞬間を作ってみたい。それを旅で表現したと思い、「旅のわツアー」を立ち上げたそう。「観光×〇〇」といった掛け合わせを行って活動をしている斎藤さんのツアーを紹介していきます。

 

観光×地獄物語ツアー

湯沢市には地獄や三途川があると言われています。地獄の案内人のTシャツを着たガイドと、閻魔(えんま)様のいる三途川を渡って地獄へ行き、デトックス効果のある「竹炭ヨーグルト」で汚れを落とすというストーリーを活用し、ツアーを開催。

観光×秘境の謎解き(オンラインイベント)

謎解きと観光の掛け合わせ企画。謎解きを活用して謎を解いて次に進んでいく、冒険型ツアー。イベントに参加して、実際に湯沢市に行ってみたいと思った方が9割以上だったそう。

他にも小学生向けのオンラインツアー、湯沢市の農家さんを訪問する体験ツアーなども開催していると話してくれました。

最後に斎藤さんから参加者へ向けてのメッセージとして、「もし起業を考えている方がいれば、各地で行われているビジネスピッチに参加することをおすすめします。参加することで、イメージを具現化できるし、事業に関するフィードバックや提案をもらえる機会が作れます。アイデアベースでもいいのでぜひ挑戦してみてほしいです」とお話いただきました。


湯沢市を舞台にさまざまな活動をしている、京野さんと斎藤さんの事例も交えながらの紹介を聞いている参加者からも、「考えることやアイデア発想に対する意識が変わった」、「自分が知らなかった地元の魅力を再発見できて、視野が広がったように感じました」といったコメントも上がっていました。続いてトークタイムの後は、アイデアワークショップの時間へと移っていきます。

 

アイデアワークショップで、お題に沿ったアイデアを考える

ここからは、今までインプットした情報をアウトプットする時間。Zoomのブレイクアウトルームを使用して3つのチームに分かれ、それぞれのお題についてアイデアを考えていきます。それぞれのお題と実際に出たアイデアはこちら。

 

■大塚さんチーム

課題:「もしも自分が地元の観光大使だったら」地元をどのように発信していくかアイデアを考えよう!

実際に出たアイデア
・地元の名所ではなく「知る人ぞ知るレアな情報や見所」をSNSで発信する。
・古民家などで各国の料理を提供しながら、国際交流を図る。
・移住者が考えた事業やアイデアを応援するために、学生たちに「観光インターン」として参加してもらい、町のことや事業をPRする。

 

■京野さんチーム

課題:湯沢市にこんな場をつくりたい!古民家を活用したアイデアを考えよう!

実際に出たアイデア
・庭でBBQ。
・自炊のレシピをみんなで共有できる場所を作る。
・古民家は高校生の通学路になっているので、自習できる場や本が読める場所にする。
・毎週ワークショップを行う。
・長期滞在してもらって、コワーキングスペースとして活用する。
・地元の方が考案したメニューが食べられるカフェを作る。

■斎藤さんチーム

課題:湯沢市にこんなツアーがあったら楽しそう!ツアーや体験を通じたアイデアを考えよう!

実際に出たアイデア
・三宝巡り
→自然や景観など、目的に合わせて市内を巡ってスタンプラリーも行う。
・観光+スポーツ
→傾斜地が多いのでロードバイクの大会やマラソン大会を行って、地域の特産物と掛け合わせる。
・観光+農業
→せりの根っこがおいしいのでその魅力を伝えられたり、農家さんの生の声を聴けたりする体験ツアーを企画する。

 

短い時間の中でたくさんのアイデアが生まれました。お題に沿ってアイデアを出しながら意見を広げていくこともあれば、「もっとこうすれば良くなっていくのではないか」とゲストからフィードバックをする場面もあり、学生たちが主体となって発言することも多かったです。

 

「湯沢つくるカレッジ アイデア出没注意- CHALLENGE YOUR THE CITY –」

あっという間に時間は進み、残すところ交流会のみとなりました。交流会では参加者から「想いを形に変えていくことが大事だと感じたので、どんどんアウトプットして地元を盛り上げていきたい」、「この経験を通して、何か地域のための取り組みを企画し、実行してみたいと思います」と声が上がっていました。

「湯沢つくるカレッジ アイデア出没注意- CHALLENGE YOUR THE CITY –」は、今回で終わりではありません。

次回イベントの開催も企画していますので、何かに挑戦してみたいけどどうすれば良いかわからない、アイデアの生み出し方を学んでみたいなど、熱い想いをもった学生のみなさんのご参加をお待ちしています。イベントの詳細が決まり次第、情報をアップしていきますのでチェックしてみてください!

湯沢市公式ホームページ
https://www.city-yuzawa.jp/