• EC STORE
  • twitter
  • Instagram
  • Youtube
  • お問い合わせ

羊をめぐる冒険②
自然と共生する占冠村のニニウファーム

“北海道といえばジンギスカン”

そんなイメージがあるからこそ意外ですが、実は羊肉の国内自給率はたったの5%なのです。

しかし、ここ数年、北海道では羊を飼う人が増えてきています。

前回は美唄市で「アスパラひつじ」を育てている西川農場へ訪問しました。その際、オーナーの西川さんが「実は、ぜひ会ってみてほしいユニークな羊飼いがいてね…」ととある人を紹介してくれたのです。

多岐に渡る分野で面白い取り組みをしている西川さんが薦めてくれる方だから、相当ユニークな人に違いないでしょう…我々はドキドキわくわくしながらその地へ向かいました。

村面積の9割以上が山林!そんな占冠村にある「ニニウファーム」

訪れたのは、北海道勇払(ゆうふつ)郡にある占冠(しむかっぷ)村です。「しむかっぷ」という独特の地名は、アイヌ語で「とても静かで平和な上流の場所」を表す「シモカプ(shimokap)」を由来としているという説もあります。

この占冠村は四方を山に囲われており、なんと村面積の9割以上が山林。そんな占冠村の一角に、ニニウという地域があります。占冠村のなかでもひときわ自然豊かなこのニニウに住んでいるのは、たった2世帯4人だけ。そのうちの1世帯が、今回訪ねる「ニニウファーム」です。

自然に魅せられ、羊飼いに憧れて移住

ニニウファームのオーナーである黒井宏諭さんは、もともと札幌で料理人をしていました。

料理人の仕事と平行して行っていた狩猟がきっかけで占冠村(ニニウ) へ訪れました。

帯広出身で、小さい頃から羊やジンギスカンを身近に感じていたこと、占冠村の自然に魅せられたこと、そして、ニュージーランドの羊飼いのDVDを見て、「かっこいいなぁ」と思ったこと。いろいろな要素が重なり、2013年の夏にニニウに移住、「ニニウファーム」という羊の牧場を構えています。

ニニウファームの羊たちは、広々とした敷地で放牧されながら、すくすくと育っています。

責任を持って、愛情深く羊を飼うということ

ニニウファームで黒井さんのお話を聞いて、初めて知ることがたくさんありました。

ひとつは、羊を清潔に保つために幼い頃にしっぽを切り落とすということです。羊はしっぽが汚れると、そこからお尻に汚れがついて、うじがわいてしまったりすることがあります。それは羊にとってよくないため、幼い頃にしっぽを切り落としておくことで、羊の体をいつでも清潔に保つように気を付けているのだそうです。

また、ニニウファームでは、羊の個体を識別するために“耳刻(じこく)”という方法をとっています。耳刻とは、羊の耳に切り込みをいれて、その数や組み合わせで識別する独自の方法です。

そして、何より驚いたのは、黒井さんの羊に寄り添う姿勢です。

ニニウファームでは、毎年羊たちに赤ちゃんが生まれます。そのお産の時期、黒井さんは羊のそばでずっと寝泊まりするのだといいます。もちろん、冬はマイナス数十度にものぼる極寒。そんな寒い中でも、防寒着を着込み、ずっと羊のそばで出産を見守ることで、新しい命の誕生を、お母さん羊と一緒に迎え入れているのです。

黒井さんは、「おいしい肉をつくるためには、無理して飼える以上の頭数は飼わないんだ」とおっしゃっていました。だからこそ、羊一頭一頭にしっかりと寄り添えるのかもしれません。

自然と共存しながら生活を営む

ニニウファームでは、羊の他に鶏なども飼っています。また、黒井さんのお家に足を踏み入れると、たくさんの犬たちがお出迎えしてくれました。

また、山や川が広がるニニウファームの周りには、たくさんの動物や生き物が生息しています。きつねや鹿、熊が出没することも。また、家から少し歩くと、川を上ってきた鮭たちの姿が目に入ります。

自然や動物と共生している姿が、聞くお話のひとつひとつ、目にするワンシーンワンシーンから垣間見えました。

また、黒井さんは野菜の有機栽培も手掛けています。しかし、ときには害虫に食べられて野菜たちがダメになることも。けれど、被害に遭っても「自分たちが食べる分さえあれば、まあいいか」と、黒井さんはあっけらかんと笑っています。

そのように考えられるのも、きっと「自然の中で生きるとは、こういうことだ」と黒井さんがわかっているから。

「うちの周りには野生動物がたくさんいます。自然と共存しながら、人間のエゴにならないように自然の中で営んでいきたいんです。」と語ってくれた黒井さんの言葉にも表れているように、自然に身を任せて生きているのです。

こうしたユニークな生活を知ってもらおうと、黒井さんは定期的に道内の高校生を招き、農業や羊飼いの手伝い、ニニウでの生活を体験してもらっています。同じ北海道に住む高校生にとっても、ニニウという特殊な地域で過ごせる時間は、忘れられない貴重な体験になるのではないでしょうか。

ニニウで見つけた、人間らしい羊飼いの日常

ニニウファームを見学させていただいた夜は、黒井さんにカレーをご馳走になることに。この宴会から駆け付けてくださった西川さんが、アスパラひつじのハムとフランクフルトを持ってきてくれたので、一緒にいただきました。

今回初めて訪れた、ニニウという土地。

これまで私たちは、全国各地のいわゆる“地方”と呼ばれる場所にも多く足を運んでいますが、そういった場所とはまた違う空気感がニニウには漂っていました。不便だけど、自然と共生する人間らしい生活と、その生活を愛している黒井さん夫妻に出会うことができました。

そうした生活は、絶対に東京では味わえないものだからこそ、羨ましく、美しく、私たちの目には映ったのです。

自給自足をして、自分の手で面倒を見られる範囲で羊を飼い、動物や自然と共生する。そんな羊飼いのかけがえのない日常が、ニニウにはありました。