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羊をめぐる冒険①
アスパラひつじを育てる美唄市の西川農場

海の幸、じゃがいも、味噌ラーメン、スープカレー、ソフトクリーム。
「北海道のグルメと言えば?」と問われるといくらでも名前が挙がるほどに、北海道は食の宝庫といえる土地です。なかでも、北海道ならではの名物として名高いのがジンギスカン。羊の肉を用いた焼肉料理です。

羊肉の国内自給率は0.5%、けれど近年増えている“羊飼い”

「北海道には広大な土地があり、たくさん羊が飼われているからジンギスカンが名産なんでしょう。」
そう思いませんか?
けれど、実は羊肉の国内自給率はたったの0.5%なのです。
というのも、昔、羊は軍需用に飼われていました。兵隊が寒い地域に戦闘に行く際の防寒着に羊毛を使っていたのです。そのうち「毛だけ使うのはもったいない。羊の肉をおいしくいただく方法はないだろうか」という声が高まり、いわゆるジンギスカンが生まれました。
ジンギスカンはまたたくうちに人気になり、広まったため、北海道で飼っている羊の頭数では間に合わず、オーストラリアやニュージーランドからの輸入に大きく頼ることになったのです。

そんな、意外と自給率の低い羊肉ですが、そんななかでもここ数年、北海道で羊を飼う人が増えてきたといいます。
どんな人が、どんな思いで、羊を飼っているのかに迫るため、我々は北海道へと飛びました。

「アスパラひつじ」を育てている美唄市の西川農場

訪れたのは、空知地方の中心部・美唄(びばい)市にある西川農場です。

農場に到着すると、「メェ〜メェ〜」と元気な声で鳴く羊たちが迎えてくれました。

西川農場の代表・西川崇徳さんは、2008年頃、美唄に遊びに来た友人に「北海道のジンギスカンは、どうして地元の食材を使っていないの?」と質問されます。その言葉をきっかけに農業を始めたとき、偶然お父様がペットとして飼っていたのが3頭の羊でした。
そこから羊の飼育も始めることになるのですが、西川農場の大きな特徴は“ひつじのエサ”にあります。
それは、“アスパラ”。

市内の選果場で、長さを揃える際に切り落とされて廃棄されてしまっていた、アスパラの根本の部分をひつじに与えて育てているのです。
アスパラには、もともと元気の源であるアスパラギン酸という成分が豊富に含まれています。こうしたアスパラの効果によって、西川農場の「アスパラひつじ」たちはみんな元気でたくましく育っています。
また、アスパラひつじには、輸入羊肉と比べて「旨み成分であるグルタミン酸の含有量が高いために、甘みや旨味が強い」「羊特有の臭みが少ない」といった特徴もあります。

羊たちは、大好物のアスパラを頬張る。そのアスパラが羊にいい影響を与えて、羊たちの体調を良好に保つ。そして、旨味の強い、おいしい羊肉が出来上がる。こうした良い循環が生まれているのです。

ちなみに、アスパラひつじを飼育するうえで発生する敷きわらやフンは、堆肥にして畑に戻しているそうです。こんなところにも、環境に負荷を掛けない、西川農場の“循環型農業”へのこだわりが垣間見えます。

羊肉を、ベーコンやソーセージ、パテに加工して販売も

西川農場では、羊肉を加工しての販売も行っています。
たとえば、こちらは「アスパラひつじ」のラムのバラ肉を使って作ったベーコンです。


引用:https://asuparahitsuji.stores.jp/items/57690d87a458c0cae3000afa

同じく空知地方の新十津川町にある手作りのハムとソーセージのお店「ヴルストよしだ」さんにお願いして、優しい味に仕上げてもらっているそうで、焼くと一気に羊肉の香りが漂ってくる、食べ応えのある一品です。
他にも、粗挽きで茹でるタイプのソーセージ「フランクフルト」や、「アスパラひつじ」のウデ肉とバラ肉、そして羊レバーを使用したパテなども販売しています。パッケージも可愛いですよね。

これらは、全国どこからでもオンラインショップを通じて購入することができます。羊肉を加工品にもすることで、より多くの人に、さまざまな入口から、羊肉のことを知り、味わってほしいという気持ちが込められているのです。

地元の食材・ワインとともにパンを味わえるカフェもオープン

羊肉の新しい可能性を模索する西川農場ですが、2017年1月から農場のすぐ近くにカフェもオープンしました!
その名も「カフェ・ストウブ」

引用:http://stoven.cafe/

ストウブをオープンしたのは、「おいしいパンを作り、提供したい」という思いから。
西川農場のある北海道美唄市は、昔から米や麦、豆類といった穀物が栽培され、野菜の生産も盛んな土地です。 また、美唄が位置する空知地方は、素晴らしいワイナリーが増えつつあることで近年注目されている地域です。
西川さんは、同じ地元の空気や水で育った野菜やワインと一緒に食べられる肉製品を、アスパラひつじの飼育によって生み出しました。けれど、「お料理に合わせるパンが足りない」ことに気付いたそうです。
そこで、2015年から小麦を育て始めました。小さな耕作放棄地を譲り受けたため、最初は木の伐採、ゴミの片付け、排水路の整備で手一杯。そうした作業を経て、なんとか種を蒔き、小麦を収穫できるようになったのだそうです。
ストウブでは、収穫した小麦を石臼で挽いた地粉を使い、 手造りの石窯でパンを焼いて提供しています。

お店に並んでいるパンたちは、歯応えがありもちもちとした食感が印象的で、美味しさと満足感を感じさせてくれる一品ばかりです。これらのパンは、北海道の食材を使った軽食や、飲み物とともにいただくことができます。

ストウブでシェフをしている石井さんは、2015年に東京から奥様の実家がある北海道にIターンされた方なのだそうです。というのも、ストウブを始める前、西川さんが理想のカフェを探すべく各地を渡り歩いていたときに見つけた東京のお店でパンを焼いていたのが石井さんだったのだとか。いろいろな巡り合わせも重なり、石井さんが移住してきてくれたことで、ストウブの構想は一気に実現に向けて動いたのです。
カフェを運営するなかでも、西川さんは地元の食材を地元でいただける循環の実現と、地方での雇用創出を実現しています。

プロデューサーとして地元と“羊界”を盛り上げる西川さん

西川農場では、年に一度“謝肉祭”というパーティーも開いています。これは、西川さんが取引先の方や仲間100人ほどを一同に農場に集めて、羊肉をいただくバーベーキューなどを実施するものです。

引用:https://www.facebook.com/pg/NishikawaFarmHokkaido

こうした場で、美味しい羊肉を通して、お馴染みの人と親好を深めたり、初めましての人同士が繋がり合ったりするのです。他に、農業体験の場の提供なども定期的に行っているそうです。
このような活動を手掛ける西川さんのお話を聞いていると、羊飼いであることはもちろん“プロデューサー”だなあと感心してしまいました。

地元の食材や資源を利用した循環型農業の実現、「アスパラひつじ」という新しい羊肉ブランドの確立、そして交流や雇用、農業体験の場づくりを通した地域の発展への貢献。西川さんの手掛けられていること、そして目指している世界のお話を聞いていると、羊を起点に無限の可能性が広がっているようで、とてもわくわくしました。
農場やカフェを案内していただき、お話を聞かせていただいた後は、アスパラひつじをいただきました。お野菜とともにいただくアスパラひつじは絶品で、大切に育てられた羊たちのことを思いながら、ありがたくいただきました。

他の都道府県には無い、広大な大地と溢れんばかりの自然を持っている北海道。
そこで、面白く新しい取り組みをしている羊飼いの方に出会うことができました。