「SETAGAYA PORT」プロジェクトで生まれる ”新しいセタガヤ” 世田谷区×民間連携事例|地域コミュニティプラットフォーム設計術
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自治体のコミュニティプラットフォームは、なぜ続くのか|世田谷区 SETAGAYA PORT 運営5年半の中身

世田谷区が主催する「SETAGAYA PORT」は、2021年3月に始まったコミュニティ型のプラットフォームです。登録メンバーは2026年7月時点で7,700名を超え、定期交流会、地域課題に取り組む共創プロジェクト、年に一度の大型イベントの3つの Official Program が動いています。dot button company は立ち上げから事務局として運営を担当しています。

自治体がコミュニティを立ち上げるとき、難しいのは初年度ではなく2年目以降です。イベントに人は来るが、翌年度にまた最初から集め直す。プロジェクトが単発で終わる。この記事では、SETAGAYA PORT が5年半のあいだ何をどう運営してきたかを、区の公表資料の数字とあわせて書きます。区と民間の役割分担や続いている理由は、官民連携で「続く場」をつくる|世田谷区 SETAGAYA PORT を5年半運営して分かったことにまとめているので、体制の話はそちらをご覧ください。

SETAGAYA PORT のロゴ「ここから、世田谷をリミックスする」

この事例の要点

  • 相手:世田谷区(経済産業部 経済課)。区が主催、dot button company が事務局として企画・運営
  • 期間:2021年3月〜現在(継続中)
  • 対象:区内外の企業、スタートアップ、フリーランス、会社員、プロボノ、大学、金融機関。20〜40代を軸に世代・業種を問わない
  • 数字:登録メンバー 7,700名超(2026年7月)。区の公表では令和6年度末の LINE 登録 6,701人、交流会10回・277名、事務局面談 約160名
  • 構造:「つながる」「共創する」「交わる」の3つの Official Program で、関わる深さの違う人に居場所をつくる
2021年3月の SETAGAYA PORT オープニングイベントの会場

前提:登録は無料、入口は広く、深さは3段階

SETAGAYA PORT の登録は無料で、区内在住・在勤の条件もありません。個人でも法人でも学生でも登録できます。条件を絞ると「正しい人」だけが集まり、掛け合わせが起きないからです。

そのかわり、関わる深さは3段階に分けています。年に一度のイベントに来る人、毎月の交流会に顔を出す人、プロジェクトの担い手になる人。どの深さにも居場所があるように、Official Program を「つながる」「共創する」「交わる」の3つに分けました。以下、それぞれの中身です。

SETAGAYA PORT HUB(つながる)のイメージ

つながる:SETAGAYA PORT HUB

入口にあたるプログラムです。人と人がつながり、次の展開に進むための場を、複数の形で用意しています。

BARニューウェーブ世田谷
2021年から続く定期交流会です。会場を固定せず、三軒茶屋、下北沢、下高井戸など区内の飲食店を巡る形で開催しています。会場を提供する店舗も公募で集めており、店にとっては新しい客層との接点、メンバーにとっては地域の店を知る機会になります。令和6年度は10回開催し、277名が参加しました。

セタガヤミライカイギ
事務局とのカジュアルな個別面談です。「世田谷でこんなことがしたい」「このスキルを活かせる場はないか」という相談を受け、一緒に次の一歩を考えます。令和6年度の面談は約160名。ここで話した内容が、プロジェクトへの参加や交流会での紹介につながります。

オンラインコミュニティと SETAGAYA PORT YOUTH
プロジェクトの企画・相談には Slack を使っています。また、区内在住・在学の学生が中心になって動く SETAGAYA PORT YOUTH があり、大型イベントの運営サポート、中高生向け「AIチャレンジ」の講師、大学生のキャリアトークイベント、名刺制作ワークショップなどを学生自身が企画から運営まで行っています。

SETAGAYA SOCIAL LABO(共創する)のイメージ

共創する:SETAGAYA SOCIAL LABO

地域課題にひもづく4つのテーマを軸に、区内外の個人・事業者がアイデアを持ち寄り、プロジェクトとして実践するプログラムです。

テーマ扱う領域の例
NEXT GENERATION子育てしやすい環境づくり、個性を伸ばす学び、国際交流、大学連携
INCLUSIVE DESIGN障がい者がつくるプロダクト、高齢化社会、介護、ユニバーサルデザイン
FOOD AND LIVINGエシカル消費、アップサイクル、食育、ごみの削減
GREEN ENERGY自然エネルギーの活用、サーキュラーエコノミー、防災・豪雨対策、エコな交通手段

これまでに動いたプロジェクトの一部です。

  • セタオーレーベル(2022〜2025年度):区内の福祉施設を利用する方々の生活音・活動音とアーティストの感性を掛け合わせ、音楽をつくり発信する福祉×クリエイターのプロジェクト。令和6年度は8曲をリリースし、累計18曲、再生は約11万回
  • Be Ethical Market(2021〜2024年度):エシカルな出店者と対話し、商品を買うことでエシカルを体感するマーケット。令和6年度は21事業者が出展、来場は延べ約1,000名
  • サスセタ(2024年度):リペア・リメイクに取り組む区内の店を巡るスタンプラリー。25店舗・約500名が参加
  • 世田谷彩味堂(2024年度):区内の飲食店と、地域や産業に関心を持つ人が食を共にしながら地域課題を話す循環プロジェクト。防災備蓄やレトルトカレーの販路拡大にアプローチ
  • キャリアデザイン教室(2022〜2025年度):区内の小学生・中高生向けの講座。SETAGAYA PORT メンバーが講師を務めることも
  • ほかに、百年楽街(街歩きワークショップ、2023年度)、アートウォールプロジェクト(2021年度)、AIチャレンジ(2022年度)、防災啓発イベント(2022年度)など

2024年度からは、地域課題にビジネスの手法で取り組むアイデアを公募し、加速・実現を支援するプログラム「Seta Co Crea(セタ・コ・クリエ)」も始まりました。

SETAGAYA NEW WAVE(交わる)のイメージ

交わる:SETAGAYA NEW WAVE

年に一度、あらゆる世代・業種のプレイヤーが一堂に会する大型イベントです。交流会やプロジェクトで生まれたつながりを、区全体の規模で交差させる日と位置づけています。令和6年度は申込167名・参加90名、2026年は北沢タウンホールで開催しました。

SETAGAYA SOCIAL LABO イベントで参加者がディスカッションする様子

運営で決めていること

会場を持たない
立ち上げ当初は IID 世田谷ものづくり学校の中にコミュニティスペースを置き、コミュニティマネージャーと事務局スタッフが常駐していました。いまは特定の拠点を持たず、交流会は区内の店舗を巡り、日常のやりとりは Slack と LINE、面談は個別に組んでいます。場所に人を集めるのではなく、区内のあちこちに場が立つ形にしたほうが、地域の店や人との接点が増えるからです。

代わりにやらない
事業相談も、プロジェクトの立ち上げも、事務局が引き取って完成させるのではなく、本人が動けるところまで一緒に設計します。学生の YOUTH に企画から運営まで渡しているのも同じ理由です。手を離しても回る状態をつくることが、事務局の仕事だと考えています。

数字を毎年度、区が公表する形にする
LINE 登録者数、交流会の回数と参加者数、面談者数、各プロジェクトの出展数・来場者数を毎年度記録し、区が実績報告として公表しています。担当者が代わっても数字が引き継がれ、翌年度の設計に使えます。

5年半の推移

時期できごと
2021年3月始動。オープニングイベント「コレクティブインパクト〜世田谷と社会のちょっと先のミライを考える」
2021年〜BARニューウェーブ世田谷、Be Ethical Market が始まる
2022年〜セタオーレーベル、キャリアデザイン教室、SETAGAYA PORT YOUTH の活動が始まる
2024年Seta Co Crea 開始。11月に登録メンバー 6,000名を突破
2025年3月令和6年度末 LINE 登録 6,701人(前年度比 +1,956人)
2026年7月登録メンバー 7,700名超

登録者数の増加そのものを目的にはしていません。立場の違う人が集まるほどマッチングの選択肢が増え、事業相談やプロジェクトが動きやすくなる。登録者数は、その前提が育っているかを測る目安です。

自治体の担当者の方へ

同じような場を考えている方から、よく聞かれることを3つ。

何から始めればいいですか
入口の交流会と、事務局への相談窓口の2つからで十分です。SETAGAYA PORT も、始動当初は交流会とゲストトークが中心でした。プロジェクトは、相談窓口に集まった声の中から自然に立ち上がります。

登録者を増やす施策は何をしていますか
特別な広告はしていません。交流会の会場を区内の店舗に広げ、学生に運営を渡し、プロジェクトごとに新しい層が入ってくる構造にしています。6,000名から7,700名への増加も、この積み重ねです。

単年度の予算でも始められますか
始められます。ただ、初年度は器をつくる年、2年目から掛け合わせが起き始めるというのが実感なので、複数年で見る前提で設計することをおすすめしています。

官民連携・行政との共創で私たちができることは、官民連携・行政との共創プロジェクトにまとめています。事業者・法人の方の相談窓口は事業者・法人のみなさまへをご覧ください。

参考リンク


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