
公園イベントの企画・運営を受託して分かったこと|横須賀 三笠公園 社会実験「Park at the park」
横須賀市は、三笠公園のリニューアルに向けて、2023年9月から11月にかけて社会実験「PARK CHALLENGE@MIKASA」を実施しました。公園を市民・民間事業者・市の「チャレンジの場」として開き、民間がイベントを持ち込んで、どんな使い方が三笠公園に合うのかを探る取り組みです。dot button company は、2023年10月28日(土)の1日、食とカルチャーの体験型マーケット「Park at the park クラフトの◯△□」の企画・出店者の開拓・当日運営を担当しました。
この記事は、公園でのイベント運営を委託先や公募で探している担当者の方に向けて、何を狙って企画し、誰と組み、1日の結果がその後の計画にどうつながったかをまとめたものです。

この事例の要点
- 相手:横須賀市(三笠公園のトライアルサウンディング「PARK CHALLENGE@MIKASA」)
- 期間:2023年10月28日(土)11:00〜17:00 の1日。三笠公園 GREEN SQUARE エリア
- 役割:コンセプト設計、出店者・協力事業者の開拓と調整、空間演出、当日運営、開催後の記録
- 体制:横須賀の生産者3軒と、飲食・クラフト・空間の事業者8組
- その後:社会実験の結果をもとに、市は2024年6月に基本計画を公表し、同年8月に Park-PFI+指定管理者制度の公募へ
背景:30年ぶりのリニューアルを、いきなり設計しない
三笠公園は世界三大記念艦「三笠」を擁する横須賀の代表的な公園ですが、大規模なリニューアル工事から30年以上が経過し、設備の老朽化が進んでいました。市は「横須賀再興プラン」(横須賀市実施計画 2022〜2025)で公園のさらなる利活用を掲げ、三笠公園をその拠点に位置づけています。
ただ、いきなり設計や公募に進むと、「この公園でどんな事業が成り立つのか」が分からないまま条件を決めることになります。そこで市が選んだのが、先に民間のイベントを受け入れて反応を見る「トライアルサウンディング」でした。2023年9月17日から11月19日までの既存イベント11件に加え、10月7日・21日・22日・28日・29日の5日間を新規企画の「コアイベント期間」として公募。ヨガ教室、フードトラック、アーバンスポーツ、アート企画、サウナなど、複数の民間事業者が参加しました。私たちが参画したのは、このコアイベント期間の1日です。

企画:「公園の中にある公園」
コンセプトは「Park at the park、公園の中にある公園」。公園の新しい形を模索する実験場であり、ダイバーシティやウェルビーイング、アートやマルシェといった新しい取り組みを応援する特区でもある。その考え方で、猿島を望む海沿いの芝生の上に、食とカルチャーの体験型マーケットをつくりました。ロゴには公園を連想させる緑と茶色に、少し先の未来を思わせる蛍光色を重ねています。
体験を選ぶときに決めていたのは、「横須賀らしさ」と「公園でしかできないこと」の2軸です。横須賀の食材でつくるハンバーガー、海を眺めながら書く手紙、青空の下で汚れを気にせずできるタイダイ染め、芝生に寝転べる3Dプリンターの家具。いずれも屋内の会場では同じ体験になりません。
体制:地元の生産者と、東京のクリエイターを混ぜる
| 領域 | 事業者 | 内容 |
|---|---|---|
| 食(地元) | 永島農園、ブロ雅農園、鈴也ファーム | 朝収穫した横須賀野菜の販売と、ハンバーガーの食材提供 |
| 食(地元) | 横須賀ビール | 現地での生ビール販売 |
| 食 | Smokin’ Bluemoon | 横須賀野菜を使う「究極のハンバーガー作り」の調理 |
| 食 | Diony(株式会社ANCR) | クラフトルーローハン、ライフコンディショニングブランド WITH RIVER の販売 |
| 空間 | PARK SPOT supported by onestop | 3Dプリンターファニチャーと移動式スタンドによる空間演出「Future PARK SPOT」 |
| クラフト | 手紙のヒト akina | 和紙を選んで手紙を綴る「秋に恋する手紙時間」 |
| クラフト | press shop アサヒヤ(協力:フェリック株式会社) | タイダイ染めのTシャツワークショップ |
| クラフト | 金継ぎ暮らし | 金継ぎ・蒔絵のアクセサリー販売と簡易金継ぎワークショップ |

「究極のハンバーガー作り」は、2018年に福島県で実施した企画の横須賀版です。自分で食材を選んで組み合わせる形にすると、地域の食材の説明を出店者ではなく参加者自身がするようになります。バターナッツや椎茸など、ハンバーガーには珍しい横須賀の食材を、シェフのレシピで組み合わせました。
当日:快晴、芝生の上で
当日は快晴でした。野菜の販売では、肉厚の椎茸やカラフルな大根・かぶに驚く人が、生産者の説明に足を止めていました。ハンバーガーのキッチンカーは、組み合わせを悩む人で終日にぎわい、ケバブのキッチンカーには行列が途切れませんでした。海を見ながらの横須賀ビール、台湾の屋台飯を日本向けに仕立てたルーローハン。
Future PARK SPOT では、環境に配慮した素材の3Dプリンターファニチャーに座ったり寝転んだりする人と、縁日で遊ぶ子どもたちが同じ芝生にいました。手紙のブースでは海を眺めながら和紙を選ぶ人、タイダイ染めでは世界に1枚のTシャツをつくる人、金継ぎの教室では公園とは思えない丁寧な手つきで器と向き合う人。同じ1日、同じ芝生の上で、まったく違う過ごし方が並んでいたのが、この日の一番の収穫でした。







その後:社会実験から基本計画、公募へ
市はトライアルサウンディングの結果をふまえ、2024年6月に「三笠公園集客・交流拠点機能拡充事業 基本計画」を公表し、同年8月22日から Park-PFI と指定管理者制度を組み合わせた事業者公募を開始しました。2024年12月のプレゼンテーションを経て、設置等予定者には大和リースグループが選ばれています。
私たちが担った1日は、この流れの中の「反応を確かめる」段階です。ここで何が受け入れられたかが、次の計画の条件を決める材料になる。イベントを単発で終わらせず、次の判断に渡すところまでが、公園の社会実験でのイベント運営だと考えています。
委託・公募する側から見た、この事例のポイント
1日でも、確かめたいことを先に決める
「にぎわいをつくる」だけでは、終わったあとに何も残りません。三笠公園では「この土地柄に合う業種・体験は何か」を確かめる日と決めていたので、食・クラフト・空間の3領域を意図的に混ぜました。
地元の事業者と、外のクリエイターを一緒に置く
横須賀の生産者とビール醸造所に、東京のクラフト作家や空間ブランドを組み合わせています。地元だけだと日常の延長になり、外の人だけだと地域に根づきません。両方が同じ芝生にいる状態をつくることで、「この公園で誰が続けられるか」が見えてきます。
記録を次の計画に渡す
当日の様子と出店者の内容を、開催直後に記事として残しました。運営の手を離れたあとに残るのは記録だけです。ここを設計の外に置かないことが、社会実験と単なるイベントの違いだと思います。
公園イベントの運営を依頼したい担当者の方へ
よく聞かれることを3つ。
どこまで委託できますか
コンセプト設計から、出店者の開拓・調整、空間演出、当日運営、開催後の記録までを一貫して担当できます。市や指定管理者の側で告知や会場調整を担っていただき、私たちは中身に集中する分担が多いです。
出店者は誰が集めますか
私たちが開拓します。三笠公園でも、地元の生産者3軒と8組の事業者を、企画の趣旨に合わせて個別に声をかけました。地域の事業者を優先したい場合は、その条件で組みます。
Park-PFI や公募の前段でも相談できますか
できます。むしろ公募条件を決める前に、小さく試して反応を見る段階でご一緒するほうが、条件に実感が乗ります。代沢せせらぎ公園の試行体験日も、同じ考え方で1日から始めています。
公園・公共空間の活用で私たちができることは、公園・公共空間の活用|Park-PFI・社会実験・場づくりにまとめています。横須賀市の Park-PFI 事例(大矢部みどりの公園)もこのページに掲載しています。行政との共創プロジェクトの進め方は官民連携・行政との共創プロジェクトを、相談窓口は事業者・法人のみなさまへをご覧ください。
参考リンク
- PARK CHALLENGE @ MIKASA(トライアルサウンディング)|横須賀市
- 三笠公園集客・交流拠点機能拡充事業 基本計画について|横須賀市
- 三笠公園集客・交流拠点機能拡充事業の公募について|横須賀市
- 開催時のプレスリリース(PR TIMES・2023年10月)
- 公園の社会実験を1日から始める|世田谷区 代沢せせらぎ公園「試行体験日」3回の記録
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