代沢せせらぎ公園の芝生で過ごす来場者の様子(第1回 試行体験日 開催レポート)
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公園の社会実験を1日から始める|世田谷区 代沢せせらぎ公園「試行体験日」3回の記録

世田谷区は、代沢せせらぎ公園に隣接する北側の土地 2,350㎡ を取得し、公園の拡張整備を進めています。設計を決める前に、住民が「公園でやってみたいこと」を現地で実際に試す日をつくる。それが「試行体験日」です。dot button company は、株式会社ランドスケープデザインとの協働で、2025年6月から2026年1月までの3回、この試行体験日の企画・設計・運営を担当しました。

公園の社会実験は、大きく始める必要はありません。この記事では、1日から始めた社会実験で何を検証し、何が分かり、それがどう設計と検討会に戻っていったかを、区の公表資料の数字とあわせて記録します。

代沢せせらぎ公園の芝生で過ごす来場者の様子(第1回 試行体験日 開催レポート)

この事例の要点

  • 相手:世田谷区(みどり33推進担当部 公園緑地課)。株式会社ランドスケープデザインが設計、dot button company が試行体験日の企画・設計・運営
  • 対象:代沢せせらぎ公園(既存区域)と、新たに取得した拡張区域 2,350㎡
  • 期間:2025年6月〜2026年1月に試行体験日を3回。各回1日、5〜6時間
  • 数字:第1回 約300名(想定100名)、第3回 約300名。第2回は配置案の投票に95票
  • 特徴:住民参加の「公園づくり検討会」と往復させ、現地で試した結果を基本設計と利用ルールに反映する

背景:検討会だけでは決められないことがある

代沢せせらぎ公園は、1991年から住民参加型の公園設計を経て整備されてきた公園です。今回の拡張でも「参加と協働」による公園づくりが前提で、区は公園づくり検討会を重ねてきました。

ただ、会議室での対話には限界があります。「原っぱでボール遊びをしていいか」「フェンスはどの高さなら景観を損ねないか」「のんびり過ごす場所は本当に使われるのか」。こうした問いは、図面を見ながら話しても答えが出ません。現地で、実際にやってみるしかない。

そこで区が導入したのが、検討会と試行体験日を組み合わせる方法でした。区の説明では「公園でやってみたい活動を区民のみなさんが現地で試行体験し、得られた経験や反省点を公園のデザイン・利用ルール作りに反映する取り組み」です。

体制:設計の「外観」と体験の「中身」を分けた

役割
世田谷区 公園緑地課事業主体。検討会の運営、試行体験日の告知、結果の公表(せせらぎ公園だより)
株式会社ランドスケープデザイン公園の設計。試行体験日で得た結果を基本設計プランに反映
dot button company試行体験日の企画・設計・運営。何を検証するかの設計、当日のプログラム、住民の声の記録

設計会社が「外観」をつくり、私たちがその中で行われる体験という「中身」を検証する。この分担にしたことで、試行体験日は「イベント」ではなく「設計のための実験」として位置づけられました。

3回の試行体験日で検証したこと

第1回第2回第3回
開催日2025年6月1日(日)11:00〜16:00 ※雨天で5月31日から順延2025年10月18日(土)10:30〜15:302026年1月24日(土)11:00〜15:30
会場既存区域+拡張区域既存区域+拡張区域拡張区域
テーマみどり・農・森づくり/賑わい・交流・地域活動/健康・スポーツ同じ3テーマからだを動かして遊ぶ/自然に触れる/つながる/のんびり過ごす/食べる・飲む
主な検証3テーマの活動を同じ空間で同時に展開し、誰が・いつ・どう使うかを観察フェンス高さ 2m・3m・5.5m を仮設して景観を検証。ボール遊びの音を3カ所で測定。読み聞かせ会4回。埋土種子の経過観察、生きもの・植物調査お正月遊び・プレーカー、生きもの調査、絵本の読み聞かせ、不用品交換会。遊具と原っぱについてアンケート
来場・回答約300名(想定100名)配置案投票 95票(A案38%・B案41%・C案21%)約300名

出典:世田谷区「せせらぎ公園だより」第4号・第5号

第1回で分かったこと

最初の回は、3つのテーマを同じ空間に並べ、住民がどこに集まり、何をして、どのくらい滞在するかを見ることが目的でした。

「のんびり」に一番需要があった
レジャーシートやリクライニングチェアの貸し出しに、想像以上の反応がありました。「近所のパン屋でパンを買って、食べる場所を探していた」という声が象徴的です。しだれ桜の下で数人がシートを広げると、通りがかった人も足を止めて滞留する。設備ではなく「先に誰かがくつろいでいること」が、公園の使われ方を変えました。

時間帯で使う人が入れ替わる
朝は犬の散歩とランニング、昼はランチ、午後は子ども連れ、夕方はカップル。健康・スポーツのエリアでも、午前は未就学児、午後は小学生以上と、自然な棲み分けが起きていました。これは利用ルールを時間帯で分ける根拠になります。

自然への関心は年齢を問わない
土壌調査・生物調査では、虫取りの人気が高く、都市部の公園でも多様な生きものがいることを住民自身が確認しました。子どもの真剣な眼差しと、隣で見ている大人の反応が同じだったのが印象に残っています。

一方で、反省もありました。想定の3倍の来場があり、現場は子どもたちの対応で手一杯になって、本来検証したかったことが十分に見られなかった。この反省が第2回の設計を変えました。

回を重ねて変えたこと

第2回:賑わいより検証に振る
来場者数を目的にせず、設計に直結する問いに絞りました。フェンスは 2m・3m・5.5m の3種類を仮設して景観への影響を確かめ、ボール遊びの音は3カ所で測定。配置案は3案を並べて住民に投票してもらい、95票のうちB案が41%、A案が38%と拮抗した結果が出ました。この数字は、そのまま検討会の議論の材料になっています。

第3回:関わる人を増やす
検証の精度が上がると、今度は「参加者がいなくても自分たちで検証できるのでは」という迷いが出てきます。ここで立ち戻ったのが、この公園が住民参加でつくられてきたという前提でした。第3回はテーマを5つに広げ、不用品交換会や読み聞かせなど、住民が主役になる企画を増やしました。1月の寒い時期でしたが、約300名が来場。アンケートでは「木の遊具」「アートな遊具」への関心と、「自由に遊べる原っぱがいい」という声が集まりました。

3回を通して分かったのは、社会実験は「検証」と「賑わい」のどちらかに寄せると失敗するということです。検証だけだと住民が置き去りになり、賑わいだけだと設計に戻らない。回ごとに重心を変えながら、両方を行き来する設計が必要でした。

検討会への反映と、これから

試行体験日の結果は、公園づくり検討会に戻されています。第2回のあとの第4回検討会(2025年11月30日)には21名、第3回のあとの第5回検討会(2026年2月15日)には11名が参加し、第5回では基本設計プランの説明と模型を使った意見交換が行われました。

区の公表では、拡張区域は令和10年春、既存区域は令和11年春の開園予定です。次回の検討会は2026年7月頃の予定と案内されています。

公園の社会実験を始める担当者の方へ

同じような取り組みを考えている方から、よく聞かれることを3つ。

どのくらいの規模から始められますか
1日、数テーマからで十分です。代沢せせらぎ公園も、第1回は既存区域と拡張区域で1日5時間でした。大きく始めるより、検証したい問いを1つか2つに絞るほうが、設計に戻せる結果が出ます。

来場者が少なかったらどうしますか
来場者数を目的にしなければ、少なくても検証はできます。第2回は配置案の投票が95票で、これは設計判断に十分な数でした。逆に、第1回のように想定の3倍来ると、検証ができなくなることもあります。

設計会社や指定管理者と組めますか
組めます。代沢せせらぎ公園では設計会社が「外観」、私たちが体験の「中身」という分担でした。設計・施工・維持管理を担う事業者のチームに、企画運営の担当として参画する形が中心です。

公園・公共空間の活用で私たちができることは、公園・公共空間の活用|Park-PFI・社会実験・場づくりにまとめています。行政との共創プロジェクトの進め方は官民連携・行政との共創プロジェクトを、相談窓口は事業者・法人のみなさまへをご覧ください。

参考リンク


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